nicesliceのブログ

子供を見るか、子供の視線のその先を見るか

ワールドインポートマートの思い出

池袋のサンシャインシティにかつて、ワールドインポートマートという売り場があった。
今は同名のビルとして残っているのみだが、昔はその名の通り、世界各国の特産品を売るフロアが存在したのだ。
国ごとに小さなコーナーが設けられており、土産物や、おもちゃや、食品や、日用品が並んでいた。
例えば、欧州の国々のコーナーには、チーズや陶器。
アメリカのコーナーには、宇宙食ビーフジャーキー。
東南アジアのコーナーには、謎の人形やライスペーパー、という具合に。

80年代から90年代前半に掛けて、私は母に連れられてよくここに来ていた。
長いアメリカ駐在から帰った父が、毎朝グレープフルーツジュースを飲む事を習慣としていたのだが、当時、日本のスーパーではそれが手に入らなかった為、わざわざ小一時間掛けて買いに来ていたのだ。

当時は日本の景気も先行き明るく、円も強く、海外が徐々に庶民にも身近に感じられ始めてきた時代であった。
テレビでは愛川欽也が「なるほど!ザ・ワールド」と叫び、福留功男が「ニューヨークへ行きたいかぁ〜!」と叫んでいた。

世界には、ややこしい事や悲惨な事が沢山あったのだろうが、少なくとも日本から見える海外は、概ね平和で、魅力に溢れ、輝いていた。
ワールドインポートマートには、その上澄みが集められていた。

時は流れ、いつの間にか、ワールドインポートマートの売り場は消えていた。
ビルとしては残っていても、テナントはワールドともインポートとも何の関係もない。
グレープフルーツジュースは近所のスーパーでも買えるし、世界のどんなものであれ、大抵のものは Amazon で買えてしまう。
何かを買いにわざわざ都心まで赴く事も無く、休日、何も買う物はないけれど何か面白い物を探しに街へ行く、という過ごし方もしなくなってしまった。

でも、私は思うのだ。
今こそ自分の子供たちを連れて、特に必要な物は無いけれど、何か面白い物を探して、ワールドインポートマートに行きたいなぁ、と。