nicesliceのブログ

子供を見るか、子供の視線のその先を見るか

続:2歳育児が何故大変か

2歳の男の子が、母親の彼氏に暴行を受けたという。

 

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本当に痛ましいことであり、圧倒的に力の差のある子供に対して暴力を振るうなど、論外である。
私は例えしつけの為という理由であっても、子供に手をあげる事に反対である。

しかし、件の彼氏が虐待に至った理由として、「寝ない」という理由を挙げていたのを知り、「あぁ、それは、まあ大変だよね……」と思ってしまった。

2歳育児の大変な点として、睡眠のコントロールの難しさというのは結構大きい。
2歳から3歳というのは、だんだんと昼寝が不要となっていく年齢なのであるが、昼寝が無くなっていく様というのは、或る日突然、昨日までの昼寝をしなくなるわけではなく、昼寝の時間帯が徐々に後ろにズレていき、次の時間帯の睡眠と統合されるように無くなっていくのである。
それも、なかなかスムーズにはいかず、後ろにズレる過程で夕方に寝てしまい、深夜まで寝ない日が続いたり、昼寝はしないくせに眠がって、物凄く不機嫌になったりするのだ。
不機嫌と一言でいうのは簡単であるが、ほんの些細な事で爆発するニトログリセリンの様な状態である。

そして寝かしつけというのは、食べさせに並ぶ超重労働なのだ。
娘は、絵本を読み聞かせながらの寝落ちという方法でしか寝なかった。
1時間以内で終わる事は殆ど無く、大抵2時間半、4時間ほどかかる事も珍しくはなかった
一度読み終われば、大抵同じ本を「もう一回読んで」とせがまれる。
幼児向けの絵本であるから、長めの物でも3分もあれば読めてしまう。
4時間同じ本を読み続けるという事は、単純計算で80回読むという事である。
拷問である。

そして寝かしつけが辛いのは、眠くなる環境が整っており、最高に眠いのに、寝てはいけない、という状況にこそある。
私はシステム屋時代、プロジェクトに因っては三徹くらいはしていたが、オフィスにて脳をそれなりに有効活用している状態では、そんなに眠くはならないものである。
もちろん、効率は著しく低下するが。

一方、寝かしつけは、布団に寝そべり、薄暗く、眠りに誘いやすいよう全ての環境を整えた上で、自分は眠ってはいけないのだ。
いつ寝るとも知れない子供を前にして、エンドの見えない単純作業に従事するのは地獄である。
しかも、自分がいくら頑張っても、相手が早く寝るとは限らないのだ。

一日のうちの4時間といえば、フルタイム勤務時間の半分である。
毎日0.5人日、月にして0.5人月が、「同じ絵本を繰り返し読み続ける」という虚しい作業に消えていったのである。

私は子供と過ごす時間には意義があり、効率やコストなどでは計れない価値があると考えている。
考えてはいるが、エンドレス読み聞かせ、テメーだけは別だ。
ただただ精神を削るだけである。

ある日、4時間同じ絵本を読み聞かせられた後の午前2時、娘が言った。

お腹すいたー、なんか食べたいー

いつか寝ると信じて、4時間読み続けてきたのに、全て、無に帰した
全く、無駄だった。
最高に、眠い。
眠すぎて吐き気がする。
頭が朦朧とする
手足はフラフラだ。

これからキッチンに行って、軽食を用意し、それらを片付けて、また、4時間、同じ絵本を読み続けるのだ。
そうしたらきっと、朝が来てしまう

私は娘を連れてキッチンに行き、軽食を用意し、娘に食べるように促すと、壁に、自分の頭を強く打ち付けた。
ただひたすら打ち付け続けた。
そうしないと、すぐさま寝てしまいそうだったからだ。
そのあと、奇声を発しながら何か柔らかい物を掴み、何度も壁に投げつけた。
娘は、私を見ていた。
私は、娘に暴力を振るわなかったものの、自分や物を傷つけるという行動をしてしまった。
これは、娘に見せるべきではなかったと今でも後悔している。

私は普段我慢強い人間であり、感情的になることのないよう常に心がけている。
その上、娘は最高に可愛く、心から愛している。
しかし、それでもこの有様である。

恋人の息子という存在が、上記のような状態となった時、人はどれだけ自分を抑えることが出来るのだろうか。
それを思うと、件の虐待彼氏の行動の理由が、理解も共感も出来ないが、想像だけは出来てしまうのだ。

まぁ、よくよく考えてみると、件の虐待彼氏は寝かしつけに困っていたわけではなく、単に早く男児の母親と二人きりになりたかっただけかも知れないのだけれども。