nicesliceのブログ

子供を見るか、子供の視線のその先を見るか

子供の頃の夕方、時間の速さの感覚が異常になる現象

その感覚は、幼稚園や小学校に通っていた頃、家の中に居る時、夕方突然やってきた。


自分の身体、例えば手脚が自分のものではない様に感じる。

時間の流れの速さが異常に感じられ、世の中が速回しで、且つ同時にスローモーションで動いてる様に感じる。

世界と自分の間に膜があるように感じる。

遠近感に異常を感じる。

例えば自分の手のひらや、同じ部屋にいる母が、遥か遠くにあると感じる。

途方も無く大きいふんわりした物と、途方も無く小さい尖った物が交互にやってくる感覚。

原因の無い悲しさと焦燥感と虚無感に駆られ、無意味に涙が流れる。

誰かが話した言葉や、自分の頭に浮かんだ言葉が、怒ったように高音の速回しで頭の中で何度もハウリングする。

自分の声が自分の声ではないように感じる。


頻度は月に一〜二回。

大抵は30分ほどで終わる。

とても不快で困った感覚なので、母に

「時間が速くなって困った」

と訴える事もあったが、当たり前だが解決はしない。


ある時、ピアノを猛烈な高速で弾く事で時間の感覚がリセットされ、元の状態に戻れることに気付き、それ以降、それは有効な対策になった。

またある時、姉に、こういう現象があるという事を話したところ、姉にもよく発生していたと言う。

しかも、姉曰く成長するにつれ発生頻度が減り、今では稀な現象のため、寧ろレアイベントとして楽しんでいると言う。


やがて私も成長し、あの感覚に悩まされる事は無くなったが、大人になってから、一体あれは何だったのかと気になった。

名前を知って納得したい。


調べると、離人症とか、離人感とか、現実感消失症とか、アリス症候群とかの言葉が近い様に思う。


また、私はサードマン現象や幻肢痛に興味があり、関連の本をいくつか読んだ事があるが、脳の働きとしてはこれも関連があるように思う。

脳には、実際の肉体と、自分で認識する肉体(ボディイメージ、ボディマップ)を一致させる働きを担う部分があるという。

例えば遭難により極限状態に陥るなどの要因により、そこに何かしらの問題が生じる。

すると、人は自分の肉体を、ボディイメージから乖離した自分以外の人間(サードマン)であると誤解するのだという。

あるいは死に瀕した際に肉体とボディイメージがうまく一致しなくなり、自らの肉体を天井から眺めているような感覚を得たり。

あるいは事故により手脚を失った場合に、義手義足の長さとボディイメージにもとづく手足の長さが一致せず、不快感を得たり。


子供は脳が未熟であるから、一時的に上記の部分が誤動作していたのかも知れない。