nicesliceのブログ

子供を見るか、子供の視線のその先を見るか

子育てに必要なことは『王様ランキング』に大体描いてある(気がする)

漫画、『王様ランキング』が面白い。
ネットサーフィンをしていると時々表示される広告につい釣られ、試しに読んでみたところこれがもう最高に面白い。
巨人族の王子が主人公なのであるが、生まれつき体が小さく耳が聞こえず言葉も喋れない。
おまけに、子供用の剣すら持ち上げられないほど非力である。
優秀な異母弟に王位を簒奪されたあげくに暗殺されかけ亡命する。
主人公最弱である。
しかし彼はとにかく優しい。
そして諦めない。
心が強い。
彼の周りには人が集まり、やがて非力な彼なりの知恵と戦い方を身に付けた彼の帰還を、国難を迎えた誰もが心待ちにするようになる。

もともと絵本向けに構想された話であるという。
確かに舞台やキャラクターの造形が絵本的である。
少々古風な絵柄や、時々線が雑になることの故か、Amazonレビューでは『絵が下手』などと評されていることがままあるが、私に言わせればこれほど絵の上手な作品はなかなか無い。
ここで言う『絵が上手い』とは、判で押したような萌え絵や、細部まで緻密に描き込まれた絵のことではない。
そう言う絵も確かに『上手い』が、王様ランキングの絵の上手さは、ポージングや表情、カメラワーク、舞台構成やライティングなどから登場人物の感情が伝わること、激しくデフォルメあるいは誇張された造形のキャラクターを、破綻なく動かしてみせるデッサン力、人外の生物の躍動感、などなどである。
考えてもみて欲しい。
主人公が『あうあう』しかセリフを喋れないのである。
その状態で、主人公の考えや感情、ストーリーを説明し、進めなくてはならないのである。
ものすごい画力が必要ではないか。
主人公以外のキャラクターのセリフも、少ない。
しかも重要なシーンであればあるほどセリフを削り、アクションや表情、その他の効果で伝えている。
この作品は日本語が読めなくても大体理解し楽しめるのではないか。
そう、これは小説でも画集でもなく、漫画でしかできない表現をした『The 漫画』なのである。
私は冒頭を試し読みして余りの絵の巧さに腰が抜け既刊すべてをまとめ買いした。

そしてこの幼く非力な主人公が、2歳の息子とビシバシ重なって困る。
素直で甘えん坊で無茶で頑張り屋でいつもニコニコしていて泣き虫なのである。
生まれた時からどこかに『人生二回目感』を宿していたコミュ力モンスターの娘とは、何故か全く重ならないのだが。

彼の周囲には、カッコイイ大人が沢山いる。
悩み苦しむ、強くて弱い、大人たちが彼に多くの事を教える。
そして彼の継母がまたとんでもなく魅力的なのである。
短気ですぐ怒り人の話は聞かず、常に憂い努力し反省し、いつでも深い慈愛に溢れているのである。
人には多面性があり、バックグラウンドがあり、善悪をはっきりとは分けられない。
完璧ではない。

作品中にはしばしば『母子の関係性(或いは母に相当する保護者との関係性)』が描かれる。
人は愛着形成の過程で心に内なる母(保護者)を宿すという。
主人公を含む何人かのキャラクターは、その内なる母をよすがに己を奮い立たせる。
中には、意図的に『自分に依存させる接し方』をして相手を操ろうとする登場人物もいる。
我が身に照らして考えさせられる場面が多くある。
この漫画が、アンケート等に左右されないプラットフォームで連載されていることは幸いである。
是非、バトル編やトーナメント編や特殊能力設定が始まることなく、作者の思うように連載されてゆくことを願う。

 

王様ランキング 1巻

王様ランキング 1巻

 

 

王様ランキング コミック 1-7巻セット

王様ランキング コミック 1-7巻セット

  • 作者:十日草輔
  • 発売日: 2020/04/11
  • メディア: コミック