私は、貧困家庭を救おう的な、フードバンク的取り組みに時々寄付している。
よくある、シングル家庭の〇〇ちゃんの一日、的なやつである。
『〇〇ちゃんお腹すかせてかわいそう』という感情に訴えるやつである。
寄付とは自己満足でするものだから、寄付金がどう扱われているかは気にならない。
しかし、どれもこれも、シングルマザー家庭のエピソードばかりである。
こんなにも貧困に陥りやすい仕組みは、何かおかしいのではないか。
シングルファザー家庭よりもシングルマザー家庭の方が貧困率が高いという。
なぜシングルマザー家庭がそんなにも貧困率が高いのかというと、やはり、彼女らが配偶者に養われることを前提に人生の設計をしてしまいがちだからなのではないかと思う。
それは、家事育児介護を女性の仕事にしてしまうことと表裏一体であって、経済的基盤を夫に依存したいという思いと、家事育児介護を押し付けらてしまいがちだという実状が渾然一体となり、そうさせているのではないか。
しかし、日本の企業でフルタイムで働くとなれば、帰宅は22時、23時でもおかしくはない。
子供にとってみれば両親ともに帰宅が22時というのは厳しいものがある。
「ご両親毎日遅くてかわいそう」と言われかねない。
「子供がいるのに働くのは迷惑」とも言われるかもしれない。
では、現在の日本において『かわいそうじゃない子育て』『迷惑がかからない子育て』、ひいては『シングルマザーになっても安心な子育て』って、どういうものだろうか。
- 子供が小さいうちに働くのは『かわいそう』だし『会社に迷惑』なので、潤沢な資金と後で復帰できるだけのキャリアを準備しておく。
- 高齢になってから産むのでは子供が『かわいそう』なので、20代のうちに産む。だいたい、27歳くらいでは産みたいので、新卒後から4年くらいの間に、キャリアブレイク中の費用2000万円程度と、業界内の人脈と、いつでも復帰できるだけの充分なキャリアを蓄積する必要がある。
- 住んでいる場所で子供の可能性が狭まるのは『かわいそう』なので、あらかじめ教育機関の分布を調べ、引っ越しておく。転校が発生すると『かわいそう』なので、産まれるまでに引っ越しておく。
- 公共交通機関に子供を乗せると『迷惑』なので、超都心に住むか、教育機関の充実している地方を探して住む。
- PTAに参加しないのは無責任なので、子供が中学校を卒業するまでは時間や場所に縛られないが高収入でキャリアを積める仕事をする。
- 集合住宅に住むと『下の階の人や共有部分を利用する人に迷惑』なので、ぽつんと一軒家を都心に探す。
- 子供が公園でボール等で遊ぶと『迷惑』になるが、一方で外で遊ばせないと子供が『かわいそう』なので、防音設備の整った公園を個人で設ける。
- スーパーマーケット等に子供を連れて行くと『迷惑』になるので、子供が6歳くらいになるまで商業施設には連れて行かず、ネットスーパー等で全ての買い物を済ませる。
- 小中学受験をさせないことや、毎年飛行機の距離の旅行をさせないことは『かわいそう』なので、年2000万円くらいは稼ぐ。夕方家に親がいないことや子供の勉強を見ないことは『かわいそう』なので、10時~16時くらいの勤務時間で年収2000万円くらいの仕事に就く。
- 子供が熱を出したときにそばにいてあげられないのは『かわいそう』なので、当日でも休みやすい仕事に就く。
- 大学に行かせないことや奨学金を利用させること、親の稼得力によって将来の選択肢が狭まることは『かわいそう』なので、子供一人につき3000万円くらいの大学〜大学院の費用を準備しておく。
- 子供に老後の迷惑をかけるのは『かわいそう』なので、100歳まで生きても大丈夫なように4000万円くらい老後の費用を準備しておく。
ここまでしてやっと、『かわいそうじゃない子育て』『迷惑がかからない子育て』『シングルマザーになっても安心な子育て』が完成するのである。
そんでこれ、国民の何割くらいが実現できそう?