幼児期の前半、娘はジュースが大好きだった。
大抵の子供はそうであろう。
脳のエネルギーである糖分が、消化器にさしたる負担を掛けることなく摂れるのである。
一時はジュースばかり飲んで食事を残しまくる娘の行動をよく思わなかった時期もあったが、これが中世の帆船やガレー船の中であったとしたら、アスコルビン酸を摂りまくれるフルーツジュースは正に神の飲み物だよな、壊血病にならなくて済む現代万歳! などと思って半ば諦めたのであった。
しかし、現在、小学生になった娘は殆どジュースを飲んでいない。
これには、極めて明確なある切っ掛けが存在する。
年長児であった娘を、郊外の山中にある公園に連れて行ったのである。
当時の娘はアスレチックやオリエンテーリングなど、自然の中で体を動かす類のレジャーが大好きであった。
そこで、それらが全て楽しめるようなその施設に連れて行ったのである。
時は盛夏。
危険なほどの暑さの中、水筒のお茶を早々に飲み干した我々は、園内の自販機や売店で飲み物を買いまくった。
水を購入する私を尻目に、甘ったるいジュースを買う娘。
この暑い中よくやるよ、などと内心思っていたら、案の定というべきか、娘はジュースを持て余し、水を欲しがった。
そう、極度の渇きの中では、ジュースなど飲んでいられないのである。
娘は正にこの瞬間、それを理解した。
お金より命が大事だと、我々は園内価格で割高なペットボトル飲料水を何本も買っては飲み、ほうほうのテイで帰宅したのであった。
それからと言うもの、娘はジュースを殆ど飲まなくなった。
何を飲むか聞いても、ジュースがあるよと言っても、「水かお茶」とばかり言う。
私はこれを子育てのTipsとして公開するわけではない。
私自身が、前述のとおり別にこれといってジュース反対派ではないからだ。
この話には副作用があって、山で多くの虫を目にした虫嫌いの娘はすっかりアウトドアが大嫌いになってしまい、公園遊びをあまりしなくなってしまったのである。
さて、どちらが良かったのかは、知らない。