私の母は、私の子供、つまり母の孫が飲み物を注いだり運んだりする度に、
「こぼすなよ」
と言う。
私は、この言葉には以下の効果があると考えている。
【効果】
- 『こぼす』という悪い未来に思考がとらわれる。
- 「相手に自分の能力を信じて貰えていない」と感じる。
- 「自分はこぼす様な未熟な人間だ」と信じる(自信の喪失)。
- 「こぼしてはいけない、大変な事になる」と恐れる(実際は、ただ拭けばいいだけなのに)。
- 失敗するイメージばかり先行し、その上「失敗してはいけない」と教え込まれているので、新しい事への挑戦ができなくなる。
一方、「こぼすなよ」という言葉には、具体的にどうすれば良いかの指示(「しっかり持って」等)が何も含まれていない為、子供は「こぼすな」と言われてもどうしたら良いか分からないのではないかと思われる。
尚、『脳は主語や否定形を理解できないから「失敗するな」と言われると失敗する』系の説については、私自身はある程度賛同するものの、客観的なデータを示せないように思うのでここでは言及しない。
あくまで私の主観で語れる範囲でのみ語る。
そもそも何故、こぼしてはいけないのか。
わざとこぼすなら兎も角、そうでないのなら、ただのヒューマンエラーであり子供には大して責任は無い。
大人が拭けば良いだけである。
何回かこぼせばそのうちこぼさなくなる。
それより、こぼす事を恐れてずっと
「おかあさーん! のみものー!」
と言われ続けた方が余程手間ではないか。
何回か失敗した結果、自分でやれるようになるのならば、その方がずっと良い。
ちなみに、「こぼすなよ」と言われ続けて自分で飲み物を注ぐのをやめたのであろう園児年代の私は、
「おかあさーん! のみものー!」
と言って、ある日突然
「それくらい、もう自分でやりなさい!」
と怒られた記憶がある。
理不尽。
私は大学時代から、「スキルはあるのに何故挑戦しないの」と周りから言われ続けてきた。
そして現在の母は時々、他の母親に
「おたくのお子さんは海外で働くなんて優秀で羨ましい」
という様な事を話している(母は海外に憧れが強い人間である)。
それはそのお母さんが自分の子供に
「失敗しても大丈夫、挑戦してごらん」
と教えてきたからではないかと想像する。
私の子供達には
「こぼしたら拭けば良い、大した事じゃない」
「失敗してもやり直せる、問題ない」
と教えていきたい。
尚、母が私の子供に「こぼすなよ」と言う度、母をとめ、子供をフォローしているのであるが、母は毎回忘れてそれをやるのである。