nicesliceのブログ

子供を見るか、子供の視線のその先を見るか

お金持ちになったら仕事を辞めてよいか

園からの帰宅中に娘に聞かれた言葉である。

「お金持ちになったからといって仕事を辞めることは、良い事なの?」

面白い。
哲学的な良い問いかけである。
娘よ、母は哲学には詳しくないが、全身全霊をもってお答えしよう!

まず、『お金持ち』という状態を定義しなくてはならない。
のちに続く『仕事を辞める』という表現から、ここでは『働かなくても一生、生活を維持できるお金がある状態』であると定義する。
その上で仕事を辞める事が良い事か否かは、場合による。

人が仕事をするのは、お金の為だけではなくて、人を幸せにしたり人に喜んで貰ったりするのが気持ち良いからでもある。
仕事を辞めた結果、そういう気持ちよさが失われるだけであれば、辞めることが良い事とは言えない。
また、辞めて家に籠もってゲームばかりしているというのは、まず健康に良くないのでおすすめできない。
でも、中には働きすぎて友人や家族との時間が取れなくなったり、家族を持つチャンスが失われたり、健康や命を失ってしまったりする場合もあるから、その場合は辞める事は良い事とも言える。
また、学業や資格のために辞めるのは、戦略的であると言える。
つまり、お金があろうがなかろうが、辞める前より人生が良くなるなら辞める事は良いし、辞める前より悪くなるなら辞める事は悪いのだ。

私は以前、別にお金持ちじゃないのに仕事を辞めたが、それは、働きすぎて少々体を壊していたという理由もあるし、夫婦ともに毎日終電、場合によっては泊まりのような生活で子供を育てるのは人月計算が合わなかったという理由もあるし、二度と来ない乳幼児期を味わい尽くしたいという理由もあるし、周囲の技術者たちが口を揃えて、私ならいずれまたこの業界に戻ってこられると太鼓判を押してくれたという理由もある。
だから私にとっては辞めてよかったと、少なくとも今はそう思っていると娘に説明した。
そして、そういう選択が正しかったか否かは、恐らく死ぬときまで(死んでも)分からなくて、自分にできる事は、選択した結果を正解にしていくことだけなのだ、と。

するってぇと、実はAという選択肢を選んでもBという選択肢を選んでも、それ自体には大した意味はなくて、その後の行動と自らの受け止め方によってこそ、その選択が正解だったか不正解だったかが決まるのだとも言える。

Aを選んでどうにもならなくなったら、Cを選べば良いのだ。
Cを正解にすることができれば、Cへ到達するルートであるAも正解であったと言える。
一方、選択されなかったBルートにて発生したかもしれない事象は、結果的に発生しなかったので観測不能である。
観測不能であるので比較が出来ない。
比較する必要がない。

で、なんで突然そんなこと聞くの?
と尋ねると、えー、わすれた!と返された。
なんじゃそりゃ!
気になる!