nicesliceのブログ

子供を見るか、子供の視線のその先を見るか

【前編】バリキャリ女性は何故辞める?

中野円佳氏の『「育休世代」のジレンマ 女性活用はなぜ失敗するのか?』を読んだ。
就職戦争を勝ち抜いた高学歴のキャリア志向の女性が何故出産後に仕事を辞めるのか、若しくは、何故、俗に言うマミートラックという形でゆるい働き方にシフトするのか、ということについて論じた本である。 

「育休世代」のジレンマ 女性活用はなぜ失敗するのか? (光文社新書)

「育休世代」のジレンマ 女性活用はなぜ失敗するのか? (光文社新書)

 

 
子育てと女性の就労に関する本は色々あるが、特にキャリア志向の女性にフォーカスした本はあまり目にした事が無かったので、珍しく思い手に取った。
調査対象が少なく、また、キャリア形成前の比較的若い年齢で出産をした例ばかりであるので、ちょっと自分とは状況や考えが違うな、という点も多かったのであるが、賛同、納得できる点も多かった。

特に印象に残ったのは、『相対的剥奪感』という言葉である。
生き方の選択肢が増えると、他の選択をした人と、つい自分を比較してしまう。
結婚したかしないか、子供を産んだか産まないか、働いているかいないか、キャリア志向か否か。
どの道を選んでも利点も欠点もあるわけだが、他人との比較ではつい利点ばかり目につき、自分が相対的に負けていると感じる、という事らしい。
オー、それ、ワタシの国の言葉で『隣の芝は青い』イイマス。
なお、下記の本、まだ読んでいないのであるが、多くの女性が自分を『負け組』と考えているという事らしい。
事実であれば、理由はそんなところにあるのかも知れない。
『働く女性ほんとの格差』

働く女性ほんとの格差 日経プレミアシリーズ

働く女性ほんとの格差 日経プレミアシリーズ

 

 

どんなに違った道を歩んでいでも、実は根底の考えは似ているなという人がいるものである。
あの人と自分は、ほんの少し環境が違うだけの事かも知れない。
鏡に映る内と外で、挙げている手が反対なだけであるかのように。
そこに剥奪感や優越感を抱く必要は、無いのである。

また、サンプルである『良い子』な女性達は、人生の選択において親の期待というものを無視できない。
この世代の女性達の親は、娘に、『手に職をつけて働いてほしい』と同時に、『(自分や妻のような)良き母であってほしい』とも願っている。
また娘の方でも、男性に劣らぬよう働きつつ、自分が育てられたのと同等か、それ以上に子供にケアを提供したいと思っている。
それはアンビバレンツな要件なので苦しい。
実は私の父も、この2つの相反する要件を提示してきていた。
父は、私が仕事を辞める時、結構な熱量で引き止めようとしていた。
生涯賃金や、年金支給額などの数値を引用して。
私の従来の(?)生き方および考え方は、父の考えに沿ったものであり、所謂『女性的な』職業ではない職に就き(システム屋というのはまさしく父の職業であった)、辞める事なく、常になんらかの組織に属して現役時代を終える、というものであった。
そもそも我々が育った時代(90年代から00年代前半か)、女性の成功モデルは母となる事ではなく、男性並みにバリバリと働く事である、という流行が確かにあった。
20代での出産なんて考え無しのすることだ、というような。
私の親も『勉強しろ、就職しろ』とは言ったが、『結婚しろ』とは一言も言わなかった。
2010年代にいよいよ少子問題がまずいことになり、卵子の老化などの話もあり、いきなり世の中の流れが変わり、はしごがガクンと架け替えられ、『働け』から『産め、育てろ、且つ働け』の大合唱となった。
急旋回で人生の方向性を転換した女性も多いのではないか。
私は、自分が年齢による上限などの内的要因を感じて自ら出産を積極的に選び取ったと思っているが、それはもしかしたら社会の流れというような外的要因にもよるのかも知れない。
考えてみれば親達とて人の子、世の中が『女も自立の時代。若い頃はとにかく勉強してマッチョな就職を! しかし結婚は自由(自分でなんとかして)』という流れであれば、そう娘に教えるのである。
私の知人は、学生時代に親に恋愛を制限され、かなり大人になってから親に「結婚しないの?」「変な人と付き合っちゃダメよ」と言われたと憤慨していた。
若い頃から誰とも付き合わなければ、付き合い方もわからないし、変な人を見抜き避けるスキルも身に付かないではないか。
なんという天人唐草!

天人唐草 (山岸凉子スペシャルセレクション)

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話が逸れたが、父は、私に昭和時代の父親と母親、両方の役割を求め、且つそのことを自覚していないようだった。
「電動スイングベビーラックは愛情が無い」
「ベビーベッドもベビー布団も不要。添い寝でないと愛情が伝わらない」
などの時代錯誤な言葉が、「乳児から預けて働け」という言葉と同じ口から出るのである。
また、私達夫婦が揃って毎晩終電もしくはタクシー、場合によっては会社に泊まりという忙しい日々が続いた DINKS のある時期に、
「毎日スーパーの惣菜ではいかん。食生活は健康に直結するからちゃんと作れ」
というような事も言っていた。
ハァ? 連日のデスマーチで既に体ボロボロでしたけど??

なお、父は自らの新婚時代、母に仕事を辞めさせ海外バックパッカーの旅を勧めている。
妻には仕事を辞めさせ、娘が仕事を辞めることは認めない。
ああ、上司によくいるタイプである。

ロールモデルになれ」
「君ならこのポジションになれる」
「先輩のAさんは育児と両立してるじゃないか」

おめー自身の嫁は専業だろうが!
嫁に育児家事丸投げしてるからそんな働き方出来たんだろうが!
開発案件によって通勤時間が 0.5h ~ 2.0h まで変化するのにどうやって保育園送り迎えの算段つけるんだよ!
勤務地は一体どこなんだよ!
保育園申込書すら書けないぞ!
そんでAさんは親と同居してんだろうがぁぁ!!

幸い私は夫が、悪く言えばちゃらんぽらん、良く言えば親や社会の期待からかなり自由な考えを持っている人であり(というか、大人になっても親の影響や社会から割り当てられた理想像を抜け出せない例は、優等生的女性にこそ多いように思う)、私もその影響で程よく人生に対して Que Sera, Sera になることができ、「こんな無理ゲーやってられないッス」と降りた。

この話、まだ続くのである。

 

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