nicesliceのブログ

子供を見るか、子供の視線のその先を見るか

子供の『テレビ近過ぎ問題』への対応

最近、娘が夢中になっている相手がいる。
テレビ先輩である。
 
3歳になる娘とテレビ先輩の付き合いは長い。
娘に先輩を初めて紹介したのは確か、黄昏泣きに困り果てた7ヶ月の夕方であった。
 
 
空腹でもなく
オムツでもなく
ひたすらギャン泣き つづける君
部屋には二人きり
頼れる人もない
すがるような気持ちで Eテレ点けたあの日
モニターに映る サボさん見つけ
ぴたりと君は泣き止んだね
Woo..
 
 
その日から娘とテレビの付き合いが始まった。
 
私は子供の頃、座椅子に座ってテレビを観過ぎ、年齢に見合わぬ無駄な知識と引き換えに激しい腰痛を発症し、更に今では眼鏡なしには 10 cm 先も見えない程の近視である。
テレビの益も害も身を以て知っているので、娘の眼を守りたいという強い思いがある。
 
まだ娘が喋りも拙く、機動力も低い年齢のうちは、容易に二人の関係を私のコントロール下に置くことが出来た。
コンテンツも、アンパンマンEテレジブリ等、安心して子供に与えられるものに限ることが出来た。
しかし、2歳も後半になると親の制御も利き難くなり、テレビ先輩を通じて、若干好ましくないコンテンツを観るようになってきた。
 
『おもちゃの動画』である。
 
youtube の、おもちゃ紹介系のコンテンツ群の事であるが、娘は、子供をターゲットとしたyoutube のコンテンツ全般をそう呼称している。
そもそも発端は、娘が高熱を出した事にあった。
 
 
うなされ苦しむ君
眠る事も出来ない
泣き続ける姿
見守る事しか出来ない
旦那が アンパンマンたいそう
観せてあげようと言った
試しに youtube で検索したら
いっぱい出てきたよ
おもちゃの動画ばっかり
 
 
一度観せたが運の尽き。
際限なく観たがるのである。
 
娘が一番好むのは、他所の子供が遊んでいる姿をひたすら映したものである。
おもちゃは、出てくる事も出てこないこともある。
これが、私と主人にはさっぱり理解出来ない。
これらの動画が面白いと思うのならば、公園や児童館で遊ぶ他所の子を観察するのでも良いではないか。
なぜ、わざわざテレビモニターで観なくてはならないのか。
 
娘は youtube にハマってからというもの、
それまで夢中になっていた、アンパンマンEテレも、プリキュアすらも観なくなってしまった。
 
しかし私とて元テレビ&ゲーム大好きっ子である。
アニメ版ルパン三世が Jazz への興味を育み、スーパーファミコンRPG が中世美術や神話、更にはプログラミングへの興味の種となる事を知っている。
親が好ましく思えないからという理由で、子供の好きなものを制限したくはない。
極端に言えば、近視になりさえしなければ、ある程度好きに観せても良いとすら思っている。
そして何より、どうしてもテレビ先輩に子守を手伝って貰わなくてはならない時がある。
 
そう、二人目育児である。
 
いつか書こうと思っているが、弟誕生に伴う娘の赤ちゃん返りはそれはもう激しいもので、育児の大変さが一気に 10 倍になった様な勢いであった。
朝から晩まで抱っこ抱っこ抱っこ遊んで遊んで遊んでのループとなり、それは半年経った今でも緩やかに持続している。
 
そんな中でたった一人で長男の世話をし、人として最低限の家事をするにはどうしたら良いのか。
そう、テレビ先輩の お力 を借りるしかないのである。
 
テレビで youtube を観せてさえいれば、娘は静かになる。
それまで辛うじてコントロール下にあった娘とテレビ先輩との付き合いは、一気に歯止めの効かないものとなった。
家に居る間、ほぼ全ての時間をテレビ先輩と過ごし、消そうものなら
 
「おもちゃの動画ぁ〜〜〜〜!」
 
と泣き叫ぶ。
その声で息子が更なる大声で泣き叫び、全てのタスクがストップする。
 
近視になることを防ぐ為、せめてテレビから離れて観るように言い続けているが、娘は山の様なタスクを処理する私の目をかいくぐり、ふらふら〜っと、誘蛾灯に惹かれるようにテレビに吸い寄せられてゆく。
 
このままではいけない。
近視になってしまう。
 
私は、『テレビに近づくと消える装置』を探す事にした。
 
しかし、ネットでいくら探すも、無い。
かつてその様な機能を備えたテレビが販売されていたようだが、今は無いようだ。
第一、テレビ買い替えではインパクトが大きすぎる。
予算は 4 桁、それも出来れば前半としたい。
 
しかし無いものは仕方ない。
作るしかない。
 
初めに考えたのは、『電源遮断方式』である。
 
赤外線人感センサーをテレビ前面にセットし、人の接近を検知するとコンセントからテレビへの電源供給を遮断するのだ。
 
しかし。
そう、これでは、テレビの前を通るたびに録画がストップするのだ。
 
次に考えたのは『モーター巻上げ方式』である。
 
赤外線人感センサーをテレビ前面にセットし、人の接近を検知するとモーターが作動。
ワイヤーやテグスによってテレビの前にスクリーンを巻き上げ覆い隠す仕組みである。
人が離れると、モーターがオフし、重量により布が降り、再びテレビを観られるようになる。
 
スクリーンはロールアップカーテンがベストだが、不織布や軽い布などでも何でも良い。
何ならテレビ全面を覆い隠す必要も無い。
画面中央あたりに布が持ち上がれば、充分邪魔になろう。
 
というようなアイデアを、興奮気味に夫に話したところ、
 
「ラズパイでやれば?」
 
と言われた。
 
ラズパイとは、超小型コンピューターである。
夫いわく、今、これに、リモコン信号出力ユニットを組み合わせて、スマホ等から家電を操作する遊びが流行っているらしい。
 
ほほぉ〜〜、そういうのもあるのかぁ。
 
私とて元はシステム開発者であるので、ラズパイの存在は知っていたが、そのような楽しい遊び方があろうとは知らなかった。
 
成る程。
 
人感センサーも接続出来るようだし、モーター巻上げ方式よりも、スマートな仕組みに出来そうだ。
つまり、
 
1.テレビ前面の人感センサーが人の接近を検知
2.ラズパイに接続したリモコン信号出力ユニットから電源 OFF の信号を射出
3.テレビが OFF になる
4.テレビ前面の人感センサーが人の離脱を検知
5.ラズパイに接続したリモコン信号出力ユニットから電源 ON の信号を射出
6.テレビが ON になる
 
これならば、リモコンによる ON / OFF と同じことなので、録画には影響し無い。
 
早速 Amazon で材料を揃えようとする、が、ここで問題が発生する。
 
予算オーバーである。
 
ラズパイは今回の件だけではなく、これからもおもちゃとして大いに活用できるだろう。
しかし、乳幼児二人を抱え、次にそのような時間の掛かる趣味に取り組めるのは何年後であろうか。
その頃にはもっと良いモデルが発売されているのではないか。
 
そう考えると、ラズパイ方式は見送るしかなかった。
 
今回はモーター巻上げ方式を採用するとして、Amazon で材料を揃える。
ギヤとモーターのセット、電池ユニット、赤外線人感センサー等、電子工作部品はどれも安くて有難い。
今回は使用しない材料まで、つい欲しくなってしまう。
 
うっひょぉ〜!
たっのしぃ〜〜!!
 
電子工作など何年振りであろうか。
目をギラつかせながら発注する。
 
しかし。
 
結局、届いたギヤとモーターのセットを娘に荒らされ、息子のハイハイ期&何でも口に入れるペロペロ期がはじまり、久々の電子工作には手を着けられないまま、娘はテレビ先輩と程よい距離を取れるようになっていたのであった。
 
合掌。