nicesliceのブログ

子供を見るか、子供の視線のその先を見るか

過去の風習に立ち返るくらいなら少子社会のほうがめちゃくちゃマシである

昔から、世界各地の風習について調べるのが好きであった。

ティー(夫が死ぬと同時に妻が焼き殺される風習)
児童婚(幼児婚)
名誉の殺人(女性が異性と話すと、例え相手が従兄弟であっても、性的堕落と見做され焼き殺される風習)
初対面の相手との結婚
女性器切除の風習(幼女が隠部を切除縫合しわずかな隙間を残し膣口を塞ぐ。結婚の際、夫が石斧で切り開く。排泄と月経と性交に苦痛を伴い、難産により死ぬ原因ともなる。切除の範囲や方式は地域により異なる)
処女性が重んじられる風習

これらの風習の一部は日本にもあった。
私の祖母は、夫婦生活について知識のないまま、初対面の祖父と結婚させられた。
「嫁いだら、ただ働けば良いだけだと思っていた。
 夜、一緒に寝なければいけないとは思っていなかった」
とは祖母の弁である。
なお祖父の戦死後、祖母は祖父の弟と結婚させられた。
結婚する事なしに女性が経済的安定を得る事が出来なかったからである。

これらの風習はすべて、性交相手を選ぶ権利を女性から奪うため、そして、なるべく多くの子孫を残すためにある。
つきつめるとそれは財産を守るためであり、財産を引き継ぐ際に、男性にとって子が本当に自分の子であるか、証明する方法が無かった為である。

ご存知のように、女性の地位の低い社会は多産である。
十にも満たないような子供を中年男性に嫁がせ、子供を産み育てることに集中させたら、それは子供は殖える。
未熟な母体が出産により亡くなってしまっても、そもそも多産社会であるから、母体には事欠かないのである。
日本の少子問題がネット上で議論される際、「女に教育と仕事を与えたからだ」という声が挙がる事があるが、それは正にその通りなのだ。
発展途上国では往々にして多産が貧しさの原因でもあり結果でもあるが、その状況から脱出するためのアプローチとして、女子への教育と就業と自立による少産社会への転換というのは、真っ先に挙げられる手段といえる。

しかし、先に結論を述べるが、もしも少子を避けることが必要であるならば、それは過去に戻るという方式ではなく、先に進むという方式によらなくてはならない。

ある種の猿の社会でも、社会を安定させるために、下位カーストのオスに、他所の群れから攫ってきたメスを当てがうことがあるという。
そうしないと、子孫を残せないオスの間に不満が溜まり、社会が不安定になるのだという。
あてがわれたメスの猿としてはたまったもんじゃないだろうなと思う。

さて。
少子問題の原因が「女に教育と仕事を与えたからだ」というのが真実だとして、過去の状態、つまり、出産と家事に女性が従事し、女性が自己決定権を持たない状態に戻すのが、本当に良いのか。

私は嫌だ。
私は、そもそも地球全体で見たら少子は悪くない現象だと思っている。
極めて痛みの少ない間引きである。


上の子を産んでから数年間、私は専業主婦をしていた。
私は子供達とじっくり向き合い、大変ながらも楽しく、一生分の幸せを享受したと思っている。
それは自分にとって本当に良い選択だったと思うし、その間経済的に家族を支えてくれた夫には心から感謝している。
しかしその時思ったことは、『最終的な決定権』は、経済力を持つ者にあるのだな、という事である。
妊娠出産前、夫と私の年収は同等であったが、私の年収はゼロになった。
専業主婦時代、夫が、ある家具を買おうとした。
私は、その家具は子供にとって危ないから子供がある程度大きくなるまで数年待って、といった。
何度も言った。
言葉を尽くして言った。
しかし夫はその家具を買い、言うまでもなく事故は起きた。

まあ夫の言い分もわかる。
その時の状況から考えて、住宅ローンを組むのは夫であったから、夫の好きな家具くらい置いても良いではないかという気持ちはわかる。

その時思ったのだ。
私は、二度と、子供の安全に関わる事で夫に譲らない。
私が最終的に夫に譲ってしまったのは、夫に養われていたという引け目があったからではないか。
私が最終的に意見を通すには、私が住宅ローンを組まなくてはならなかったのだ。
これから先、例えば子供達が海外の大学院に留学したいなどと言い出した際、私がそれに賛成しても、最終的なキーマンが夫である限り、夫に反対されたら終わりだ。
子供達とヨーロッパ旅行に行きたいと思っても、夫は旅行嫌いであるから、夫のお金で行くわけにもいかない。
そう、最終的な決定権は、経済力を持つ者にあるのだ。

子育てがひと段落した私は再就職し、経済的優位性は逆転した。
『子供と自分に関する事を自分で決められる快適さ』を味わっている。
私は私の裁量で子供に習い事をさせ、レジャーや外食に連れ出し、子供達と私だけで旅行に行く(夫を除け者にしているワケではなく、夫が出不精で誘ってもついてこないのである)。

あ、いつも美味しいご飯を作ってくれて洗い物もしてくれてPTAの労役も担当してくれる夫の事は大好きです(念のためフォロー)。
あと、私が専業主婦だった頃、夫は家計のお金で外食やレジャーをすることを勧めてくれてはいた。
私が、人の金でぜいたくをするのが嫌だというだけで。

重ねて言うが、もしも少子を避けることが必要であるならば、それは過去に戻るという方式ではなく、先に進むという方式によらなくてはならない。

どうするのが良いのか。
本当に難しいと思う。
子供の立場に立つと、お母さんと一緒にいたいのだし、お母さんだって子供と毎日10時間も離れて過ごしたくはないだろう。
少なくとも乳幼児の間は。
これは女だけの問題ではない。
今後、男も女も、介護によるキャリアブランクが生じることは十分考えられる。
誰であれ、40年間出力100%の働き方以外のルートが出来るようになればいいなとそう思う。

 

 

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