nicesliceのブログ

子供を見るか、子供の視線のその先を見るか

ディケンズのクリスマスキャロルが令和の私にぶっ刺さるこれだけの理由

私の育った実家では、食費と交際費は安ければ安いほど良いという価値観であった。
特に貧乏というわけではなく、可処分所得は寧ろ多い方だったと思うが、そうして貯めた金を旅行や教育費に使うという価値観だったのだ。
過度にピューリタン的な価値観だったのだと思う。
私はそれに全く疑問を抱かず大人になってしまい、その、食費と交際費をあまりにも軽んじた価値観により恥をかいたことも多かった。
今、私は結婚し、食費と交際費はあまり削りすぎても良くないという事を学んだ。

そんな実家の、とある身内の、
「SMSは一通3円もかかるから使うな」
「会社の飲み会は一回3・4千円もかかる、コロナで飲み会が無くなって本当によかった、家で食べれば十分の一で済むのに」
という言葉を聞いた時、私の頭に咄嗟に浮かんだのは、
「うわー!
 スクルージおじさんみたい!」
であった。

スクルージおじさんはディケンズの小説、クリスマスキャロルに出てくる老人である。
事業が成功して金持ちであるが、とにかくケチで、人との交流を嫌い、自分の為にとにかく金を貯めるマンと化した人物だ。

改めて本作を振り返ってみると、令和という時代や、私という個人にぶっ刺さる記述が多くてびびる。

社会背景について。
クリスマスキャロルの時代は、産業構造が変化し、経済格差が広がっている。
現代は、やはり産業が高度化し経済格差が拡大している。

主人公の性格について。
スクルージおじさんは、人との繋がりを忌避し、経済的な価値観を最優先する。
現代人もまた、貧しい家庭持ち人生を歩むよりは豊かな独身人生を歩むことを選ぶ。
そして、地域コミュニティの煩わしさに対する忌避感が蔓延し、それによって地域コミュニティの崩壊が起こっている。

スクルージおじさんは、青年時代は貧しく、後に成功した。
今は人との交流を避け、ひたすら金を貯める。
同様に私は、就職氷河期で辛酸をなめ、出産育児後の再就職で逆転。
一生に一度しかない子供達との幸せな時間をかなぐり捨てて資産増に励む。

スクルージおじさんは言う。
人との交流など無駄無駄無駄無駄ァ!
現代人もまた、言う。
会社の飲み会など無駄無駄無駄無駄ァ!

私は、会社の飲み会は色々な人と話せて勉強にもなるので寧ろ好きなのだが、それが苦手だ無駄だと思う人の気持ちは分からないこともない。

色々な側面から、自らや社会を重ね合わせて考えることができる作品は名作である。

私もこの本から学ぶべきことは多いが、令和を生きる多くの孤独な現代人は、既婚・未婚・子持ち・子なしを問わず、皆、この本がぶっ刺さってしまうんではないかなぁと思う次第である。